内部監査情報局

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J-SOXの改定報道について

本日の日経新聞1面で、金融庁による内部統制報告制度(J-SOX)改定の動きが報道されました。

以下、要約です。

金融庁は企業の不正会計を防ぐため、内部統制報告制度を見直す方針だ。内部統制に問題がないという報告書を提出していながら、不正会計などの問題が発生し、訂正報告書の提出を余儀なくされる企業が多い。この訂正報告書への監査の義務付けを検討する。企業会計審議会の作業部会で13日から議論を始め、年内にも結論をまとめる。」

ポイントは以下の3点だと思います。

①訂正内部統制報告書への会計監査人監査の義務付け

②実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)の見直し

③内部統制監査へのダイレクトレポーティング導入の検討

この中で一般的な企業に影響が大きいのは③でしょうか。

直接監査によって、お手盛りのJ-SOX評価がバレる会社もあるでしょうからね(笑)

ただし、監査報酬の増大を嫌う経済界の反対で、実現は困難かと思います。

キックバック

本日の日経新聞から要約です。

「業務委託先に代金を水増し請求させ、当時勤務していた不動産会社に約3100万円の損害を与えたとして、警視庁は3日までに、ニュースアプリ大手Gunosy(6047・東証プライム)の執行役員、山本裕太容疑者(40)を背任の疑いで逮捕した。

逮捕容疑は2018年10月から20年2月にかけ、ウェブサイト制作などの委託先に代金約3100万円を水増し請求させ、ケイアイスター不動産(3465・東証プライム)に支払わせて損害を与えた疑い。

山本容疑者は当時、同社の執行役員を務めていた。

警視庁によると、約3100万円のうち約2千万円は委託先から山本容疑者の個人口座などに送金された。同庁は使途を調べている。」

典型的なキックバック事案ですね。

キックバックは資金が個人口座に流れるため、発見するのが難しいのですが、ケイアイスター不動産は自らの調査で発見したとのこと。

内部通報があったのかもしれませんが、これが内部監査部門の仕事なら、率直に「偉い!」と賞賛します。

J-SOXばかりやっている内部監査人には絶対発見できませんからね。

キックバックを見破るコツは、やはり金額の大きいシステム開発絡み、相見積もりが取られていない、発注者と個人的な関係が噂されている、保守でも毎月数百万円が支払われている、などですかね。

発注者の分不相応な派手っぷりも要注意です。

みなさんの周りにも、このような方いませんか?

内部統制実務士

内部監査の資格としてはCIA(公認内部監査人)やCISA公認情報システム監査人)が有名ですが、筆者がお勧めしている資格が一つあります。

それが「内部統制実務士」です。

日本経営調査士協会が認定する民間資格で、J-SOXを体系的に学べる唯一の資格と言えます。

標準資格である「IPO・内部統制実務士」と上級資格である「上級内部統制実務士」に分かれており、前者は合格率7割程度ですが、後者は3割程度の狭き門です。

昨日、上級試験の結果が通知されたようで、筆者の同僚からも「合格!」という嬉しいニュースが飛び込んできました。

どちらかと言えばセカンドライン(J-SOX構築・運営側)向けの資格ですが、当然内部監査人も同程度の知識を持っておかないと、J-SOXの評価はできません。

真っ白な状態で内部監査部門に配属された方は、まず「IPO・内部統制実務士」の資格を取得し、実務をやりながら「上級内部統制実務士」にチャレンジすることをお勧めします。

グローリー子会社の元社員逮捕

以下、昨日の日経新聞の要約です。

「貨幣処理機大手グローリー(6457・東証プライム)の子会社の銀行口座から約3億9千万円を着服したとして、大阪府警は子会社の元社員を業務上横領容疑で逮捕した。会社側の調査で着服総額は約21億円に上り、うち約17億円を馬券購入に充てていたとされる。」

2月に報道されたのでご存知の方も多いと思います。

記事を読むと、3月に社内調査委員会の報告書が出ているとのことなので、ダウンロードして読んでみました。

結果、「これは他人事じゃない!」と背筋が寒くなりました。

うちのグループにも単独で資金移動ができる人がきっといる。

でも、インターネットバンキングの権限や銀行口座の入出金明細をきちんと調べたことはない…

というような方も多いのではないでしょうか。

不正防止の要諦は、不正を起こせる機会を潰すこと

グローリー事件を理由に、一度調べてみたほうがいいと思います。

 

大企業の内部監査人

先日、日本を代表する大企業のCAEとお話しする機会がありました。
内部監査部門も十数人を抱える大所帯ですが、驚いたのはCIAホルダーが一人もいないということ。

理由を聞くと、内部監査に配属されてもジョブローテーションで2〜3年で異動してしまうため、CIA取得のモチベーションに至らないのだとか。
彼らにとっては、キャリアパスの通過点なのでしょう。

このような会社は中途採用もやっていないと思いますが、内部監査人として成長したければ、内部監査部門の立ち上げ期や再構築期にある企業に行くべきと改めて思いました。

扶桑化学工業の内部監査室長に高橋渉氏が就任

扶桑化学工業(4368・東証プライム)の内部監査室長に高橋渉氏が就任するようです。

時価総額1200億円、リンゴ酸で有名な大阪の化学メーカー。
昨年11月に内部監査室長候補(副室長)を募集していたのですが、現室長が今月末で定年退職となり、採用された副室長が昇格したと想像します。

どこから来た方か調べてみると、近所の小林製薬(4967・東証プライム)の元内部監査室長が同姓同名の方でした。

化学と製薬は業種的にも近いので、おそらくこの方ではないでしょうか。

出所:日本経済新聞

内部監査人のバイブル

筆者は内部監査人になって5年以上になりますが、バイブルと呼べる書籍が2冊あります。
1冊目は同文館出版から出ている「これだけは知っておきたい内部監査の基本」で、元三菱商事監査部長の川村眞一氏が書かれています。
これはいわゆる解説本やノウハウ本ではなく、内部監査人の心得や基本姿勢を説いた本です。
新人だけでなく、ベテランにも読んでほしい名著だと思います。
もう一冊は、中央経済社から出ている「これですべてがわかる内部統制の実務」で、公認会計士5名による共著です。
日本経営調査士協会が実施する「上級内部統制実務士資格」の公式テキストでもあります。
企業会計審議会の内部統制基準や実施基準の解説本のような構成ですが、範例が多く掲載され、J-SOX実務の参考書的に利用しています。
いずれも書店で偶然見つけましたが、未経験で内部監査部門の立ち上げを任され、指導者もいない中で暗中模索していた筆者にとって、まさに一筋の光明、目から鱗の書籍でした。
みなさまはどんな書籍をお使いでしょうか?